元    さ    ん    の    山    紀    行
 
東笠山 (1,687m)熊尾山 (1,518.5m)
<富山市(旧大山町)>  平成18年05月08日




 「何処の山へ行きたい?」の答えは、やはり行った事のない山域の希望が多かった。「熊尾山・東笠山・西笠山」の計画を立ててはみたものの、参加者が10名の上に、宴会好きの「好山病・・」、そして、水平道の雪の状態如何では、とても西笠山までは辿り着かないのではないか。それ以上に3座の一つもに、届かないのではないと、ちょっぴり不安であった。 でも、逆に何かあったら、支えになるし、最近出没する熊への恐怖感が薄らぐ事になり、またとない機会が訪れた事にもなったような気がした。

 「晴れマーク」が、少し遠のいたような予報ではあったが、「雨はない。」の確信が、出発時から崩れ、ワイパーを回しながらの運転となった。集合場所のアルペン村に着いた頃の雨は、肌に感じるかどうか程の状態になり、薄暗い中雨具を着込まなくいいスタートとなって欲しいと、6台の車は小口川水須ゲートに向かった。
 県道富山立山公園線は、横江を過ぎてから、富山地方鉄道立山線を潜り常願寺川を渡る。富山上滝立山線の才覚地地内で小口川を渡らず、左岸を辿りその小口川を渡った所が、有峰林道小口川水須ゲート(料金所)である。

施錠された水須ゲート ゲートから約1時間弱の林道歩き 小口川第3トンネル 林道の土砂崩れ場所

 早速準備し、しっかり施錠されたゲート横から、林道を歩き始めたのは、予定通り午前5時であった。降雨の不安はあったが、全員が雨具を纏わず、ほぼフル装備での出発である。小口川第1トンネル142m、第2トンネル439m、第3トンネル106mを抜けて10分程の所が、大きく土砂崩れが起きており、この路線は、しばらく開通しないのではないかと思うほどであった。

 林道から離れ小口川第2発電所の橋を渡ったのが、水須ゲートを発ってから50分、予定通りの行動であった。10分程休み、登山道(点検道)を行く。送水管と交差する所から、その点検道を捨て、送水管横の階段を登る。(以前、何処から数えたか分からないが、660段あったように、メモに書いてある。)登りつめると、サージタンクの下に出る。そこから、小口川第3発電所まで水平道が続く。水平道に行かず、南への尾根を辿ると高杉山へ、すなわち、ここが分岐点というところか!


第2発電所前で小口川を渡る 送水管横の階段を登る 階段の上部を行く サージタンク

  今回の山行にあたり、一番危惧したところが、この水平道の通過であった。低山では殆ど残雪の心配はない標高750m±20mであるが、何しろ奥深い山なわけで、どのようにな雪の状態か分からなかった。今年は特別雪が多かったから、沢に架かるスノーブリッジや雪の着き方次第では、イヤなトラバースがあるのではないかと思っていた。そのためにも、ピッケルやアイゼンの装備をお願いしたのである。

水 平 道 第 一 の 関 門

車の雪囲いが通路を塞ぐ

 第2・第3発電所関連の設備構築のために付けられたと思われるこの水平道は、祐延ダムまで続いているようである。今は使われていないようであるが、トロッコのレールが見え隠れする。20~25分程歩くと、第3発電所が見えて来るが、ずっと回り込まなくてはならず、まだまだ時間が掛かる。すぐに沢にかかった雪渓が現れた。真中が薄くスノーブリッジ状になっており、登ると崩壊の恐れがあり、流れに沿った雪渓の割れ目を歩き、再び雪渓に飛び乗った。
急斜面の崩壊場所の通過Ⅱ
急斜面の崩壊場所の通過Ⅰ

 今度は、水平道の真中に、トラックが冬囲いをした状態で道を塞いでいる。3年前に来た時は、その囲いが、完全に道を塞いでいて、通過するのに難儀した事を覚えている。
 その事を思えば、今年は楽々に通過出来た。かと思うと、今度は、急斜面の崩落場所に出た。距離は短いが、下方は切り立っている。「今日は此処までか?」 と思うほどであった。

第3発電所が見える

 しかし、「若い衆」は凄い!先陣を切って土砂を踏み固め、尚且つロープを渡してくれた。高所恐怖症や度胸のない者にとっては、命綱である。ストックやピッケルを補助用具に使い、時には、手を繋いでもらったり、腰ベルトを掴んでもらったりしての通過であった。回り込んだ水平道で、再び第3発電所が見えたと思ったら、次にもチョット難儀した雪渓に出たが、先程の経験からか、それ程の時間を費やさずに通りぬける事が出来た。
第3の関門の雪渓

 サージタンクから、一時間半で水平道をクリア、予定より若干のタイムオーバーとなったものの、何事もなかったのは、チームワークの良さがもたらしたものであった。

 「あの階段を登るのですか?」 (標高差600m)と、第3発電所の貯水池の横で休んだのは午前8時をかなり回っていた。第3発電所からの登山道(点検道)には、残雪が覆い被さったり、折れた樹木の枝で、歩きにくかったが、2~3回九十九折れてから、送水管横の階段を選択した。

 もうその頃から、青空が広がるにつれて、日差しが強くなり、噴出す汗に、皆が困惑しながらタオルで顔を拭き始めた。しかし、バンダナでもしていなければ、額の汗が目に直行となり、目をパチクチしなければならなかった。その階段の傾斜は、結構強いものであり、雪の着き方次第では、階段からそれたり、登り返したりしなければならず、試練・忍耐・我慢などの語句が似合う登高である。

第3発電所 急勾配の送水管横の階段 階段での休憩 送水管の階段と分かれる

 第3発電所の貯水池が見えなくなる頃、遅れだしたメンバーの荷を分け合って担ぐ事になるが、誰もイヤな顔もせず担ぐのも「好山病・・」のよきところである。

送水管から離れ標高1400m付近に立っている「塔」を目掛けて登る

 全面雪になったのは、午前10時頃で、送水管の塔が目の前に聳え出した頃。カンジキやアイゼンを装着する者と、壷足でいくものと分かれたが、各自の思いで、その塔を目指した。送水管と共に、この塔が富山市内から見えると教えてもらった事があるが、私にはその機会がまだない。
大日連山の上に剱岳が・・
雲間に毛勝の山々が・・

 塔の上の高台で、後続者を待ち、ちょっぴり下り熊尾山を目指すが、100m超の標高差にはみえない。熊尾山のヤブの中に三角点がある。熊尾山の山頂を踏んで、第1の目標を達成したのであるが、西笠山までは、ちょっぴりきつい時間になって来た。
 「ミニ宴会」も、楽しみの一つであるから捨て難く、東笠山止まりを、「好山病・・」の重鎮「北ちゃん」に相談し、ゲストの宮ちゃんにも了解を得る。

eiko女史と大熊山三角点
大熊山で、ちょっと休憩


 「あれが、東笠山?」
 「いや、手前の1640mのピークだよ。」
 「がっかり、疲れた。」
 「いや、それから標高にして50mだよ!」
などと会話を交わしながら、真っ白な大日連山の上に、青黒い帽子のような剱岳が、少しずつではあるが大きくなって来る。

 「薬師岳が見える。」
 「北ノ俣岳、黒部五郎岳も・・」
 「あれが、西笠山?」
 「すぐそこなの?」
 

1640mのピークより、東笠山へ

 東笠山への登りでは、列が乱れた。それもそのはず、強者が先に行き、雲上のテーブル作りに足を速めたのである。でも、しんがりも、午後0時25分までは到達し、皆と握手をしながら達成感を味わった。「腹減った!」「喉が渇いた!」の連発である。出発から7時間半であるから当たり前かもしれない。

「好山病・・」恒例の食事会 何故か、かしこまって・・

 荷は皆少なめになどと思っていたが、今日も食べきれないほどの料理が、雪のテーブルに並べられた。
 欲とは尽きないものである。
「食べ物よりビールが欲しい!」
「長丁場にしては、缶ビール1本では少な過ぎたか・・」
 でも、そう言いながら、リックの底から、違った種の酔いを伴う液体が出て来たが・・。

 すっと流れたガスもすぐに消え、雲海が漂った。下界のお天気は良くない。「たまには、山だけが晴れなければ・・」と、美味しい料理を口に入れながら、会話が弾む。食事中の記念写真では、おどけてみせたりするもので、焼き物が焦げたり、煮物が噴きあがったりするハプニングがあったが、それもこれも全部楽しい想い出となるであろう。

名残惜しい東笠山で記念写真をパチリ

 座って元気を取り戻すと、目の前に見える「西笠山」への未練が、知らず知らずに滲み出るのであるが、「今度、もう少し早く出発して・・」「高杉山経由で・・」「テントを担いでゆっくりと・・」などなど、その思いは様々であったが、それからみても、東笠山は好評のようであった。リックを担いで、もう一度記念写真を撮っての山頂発となったのは、午後2時20分であった。


西笠山 大日連山と剱岳 薬師岳


去り行く雲上の人達








  ★★★コースタイム★★★

高岡3:30=アルペン村(4:20~30)=水須ゲート(4:40~5:00)=小口川第2発電所(5:50~6:00)=サージタンク(6:25~35)=小口川第3発電所(8:10~25)=送水管の塔10:35 =熊尾山11:15=1640m11:55=東笠山(12:20~14:20)=熊尾山14:55=送水管の塔(15:10~20)=小口川第3発電所(16:45~50)=サージタンク(17:10~15)=小口川第2発電所(18:35~45)=水須ゲート(19:30~45)=高岡20:50

  ☆☆☆ 同行者 ☆☆☆
         「北ちゃん」・長勢君・橋本君・eiko女史・ねぎちゃん・きくちゃん・「山ノ神」
        ゲスト=宮ちゃん・中川さん